性暴力と刑法を考える当事者の会は2015年10月29日に第1回目の要望書を神本美恵子参議院議員立ち合いのもと、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会長宛の要望書を加藤俊治・法務省刑事局経常法制管理官に手渡しました。

 

以下は第1回目要望書の全文です。

 

2015 年 10 月 29 日  

 

法制審議会

刑事法(性犯罪関係)部会長様   

 

性暴力と刑法を考える当事者の会 代表 山本潤

 

性暴力被害者の声を反映した、刑法強姦罪の見直しを求める要望書 

「私たちの声を聴いてください」  

 

 

「性暴力と刑法を考える当事者の会」は、性暴力被害者、ならびに性暴力被害を自分の事として考 えるメンバーにより、性暴力被害の実態と被害者の思いを伝えるために立ち上げた会です。

 2014 年 10 月、法務省に「性犯罪の罰則に関する検討会」が設置され、刑法性犯罪の見直しが議論 されてきました。しかし、議論の内容や報告書は、私たち性暴力被害者の現実から、遠いように感じ ました。被害者にとっての性暴力・性犯罪とは何かを訴え、被害者のリアリティを伝えていくこと が重要であると考えました。 そこで、法制審議会刑法部会でのご議論にあたり、以下を要望いたします。  

 

 

1. 強姦罪の構成要件について (諮問 第 1 強姦の罪《刑法第百七十七条》の改正)  

1)性犯罪の法定刑について

【要望】

・性犯罪は、人の尊厳に関わる望まない性行為を強制されることです。その重さを、法定刑をもっ て評価することが必要だと思います。法定刑の引き上げは、性の人権重視を社会に示すことでもあ ります。殺人に準じる法定刑にしてくださることを望みます。  

 

【意見】

・特に被害者が子どもの場合、人間として成長発達していくこと自体を阻害されます。 ・現行法で性犯罪として定められているのは「強姦」ならびに「強制わいせつ」ですが、「性的暴行」 「性的接触」「性的侵襲」「性的搾取」等、侵入度合いにより段階を分け、法定刑を加重していく必要 があると考えます。 ・法定刑が引き上げられても性犯罪加害者は社会に帰ってきます。受刑者の更生プログラム受講と 出所後のサポート(保護観察、当事者グループ等)、ならびに執行猶予者の更生プログラムの受講を 必須にすることで、「性犯罪をしない社会」「性加害行動から回復できる社会」「社会再参加ができる社会」を実現してくださることを望みます。  

 

2)強姦罪等における暴行脅迫要件の緩和

【要望】

・フリーズ(凍り付き)反応という身体反応や、関係性による抵抗の困難さを考慮し、暴行脅迫要 件を撤廃もしくは緩和してください。

・「暴行脅迫」要件を撤廃できない場合、「暴行脅迫」だけでなく、「偽計」「不意打ち」「威力」「策 略」「解離・麻痺」「薬物利用」「知的障害」「精神障害」「筋力差」等の要件を追加してください。

・裁判において、「被害者の同意」を立証するための「証拠」として、犯罪成立要件と関係のない、 被害者の私生活や性的経験を持ち出してくることは、少なくありません。こうした論証を禁止し、 プライバシーを守る規定を創設してください。

・司法関係者へ性暴力被害の実態および被害者のリアリティが理解できる研修を行い、被害者が司 法手続きの中で二次被害を受けないようにしてください。  

 

【意見】

① 身体反応による抵抗の困難さ

・現行法で求められる、暴行脅迫要件は、性暴力被害者の現状とかけ離れています。

・被害者は、被害にあうことは全く予測していません。人間は、突然襲われた時、状況によっては 「おい」という声掛けだけでも、身も心も凍りついて動けない状態になることは、精神心理学の研 究でも、明らかにされています。

・不意打ちをつかれ、襲われた時に、まず何が起こったのかが、理解できません。その後、圧倒的な 恐怖にさらされ、フリーズ反応に陥り、肉体的、精神的な衝撃が、心的外傷(トラウマ)となる人も、 少なくありません。被害者に「解離」「鈍麻・麻痺」が起これば、加害者は、暴行脅迫を用いなくて も、性行為を達成できます。

・生命を守るために、抵抗できない状況があることを理解してくださることを望みます。  

 

② 関係性による抵抗の困難さ

・また被害者が、加害者に「抵抗できない関係」にあれば、加害者は、暴行脅迫を用いなくても、性 行為を達成できます。

・内閣府が平成26年に行った「男女間における暴力に関する調査」1)では、性暴力の 66.3%が、 顔見知りからの犯行であることが、報告されています。加害者は、被害者の信頼や人間関係を利用 して犯行に及びます。ナイフで脅かしたり、殴る・蹴るなどの暴行を用いなくても、性暴力を達成で きるのです。

・加害者が男性で、被害者が女性の場合、男性と女性では筋力の差が大きく、身体的な力が対等では ありません2)

 また憲法上は男女平等ですが、「女性は男性に従う」等の男尊女卑の風潮は、少なか らず残っています。女性の管理職や政治家の割合は、世界と比較して非常に少ない現状にあります。 こうした身体的・精神的・社会的な力の不均衡が、性暴力の達成に大きく関与していることを考慮 してください。 

 

③ 不同意という概念を取り入れること

・「不同意」という概念を取り入れ、同意に基づかない性交を処罰の対象としてください。

 

④ 被害者のプライバシー保護を求めます

・現行法では、暴行脅迫要件があるがゆえに、裁判では、被害者の「同意の有無」が問われます。被 害者は本来、「証人」としての参加であるにもかかわらず、「同意がなかったこと」を立証する必要が あります。

 しかし加害者にとっては、被害者の意思・不同意を無視、あるいは抑圧して、性的侵襲を加えるこ とが、自分の力や優越性を感じる上で重要であり、被害者の同意を得ようとは考えていません。

 被害者が「同意したかどうか」「抵抗したかどうか」によって、犯罪があったかどうかを判断する のではなく、加害者が何をしたか、加害者の行為に着目して、事実認定を行ってください。  

⑤ 司法関係者への教育

・性暴力被害者が抵抗できない状況に置かれながら、裁判で暴行脅迫や同意の有無を争う必要があ ることについて、被害者が二次被害を受けることのないよう司法関係者への教育を徹底してくださ い。  

 

3)被害者の対象年齢の引き上げ

【要望】 性暴力は、加害者が「支配欲」等の欲求に基づき、被害者をモノとして扱う行為であり、そこに 同意などの被害者の意志は存在しません。児童として保護される年齢の者に対する性的侵害、性的 搾取を犯罪と定め、被害者の対象年齢を 16 歳未満に引き上げてください。児童福祉法、青少年保護 育成条例などによってではなく刑法によって罰せられることを強く要望します。  

 

【意見】

・性犯罪は「性的自由」「性的自己決定権」の侵害として位置付けられているため、「性交同意」(性 交に同意する自由)という概念が用いられています。しかし、社会が個人に対して、性交、妊娠、出 産、育児、人工妊娠中絶、性感染症、その後の治療等の結果に対する責任を求めるのは、義務教育を 終えた者であると考えます。 ・被害者の対象年齢を、義務教育を終える 16 歳未満に引き上げてください。

 

4)強姦罪の主体等の拡大

【要望】  どのような性であるかに関わらず、侵入を伴う性被害を受ければそれは強姦です。主体等をすべ ての性に拡大し、「性別にかかわらず」と明記されることを望みます。  

 

【意見】

① 被害者 

 

・被害者が男性、男児である場合、 「挿入させられる被害」があります。身体的境界線を破って、自 分の性器が膣、肛門、口腔に覆われる行為は「強姦被害」と捉える必要があります。 ・肛門レイプ、口腔レイプの場合、現行法では「強姦」は適用されません。その分法定刑が軽くなっ ています。

・現行法の定義では、LGBT が排除されています。性に関わらず、身体に密着され侵襲される性行為 を強要された時には、「強姦被害」と捉える必要があります。  

 

② 加害者

・性別にかかわらず「挿入させる加害」「挿入させられる加害」を、強姦加害として定義することが 必要です。  

 

5) 性交類似行為に関する構成要件の創設

【要望】  性暴力被害の場合、加害者との距離が非常に近く(というより密着されたという意味では、距離 がゼロかマイナスになります)、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などすべての身体的感覚が侵襲され た状態が長く続きます3)。

PTSD の発症率は、自然災害を受けた人の場合、5%くらいですが、レイ プの場合女性で 46%、男性で 65%ととても高く4)なります。密着され侵襲される行為を、強姦とし て定義してください。  

 

【意見】

・性交類似行為の範囲として、加害者による挿入物は「陰茎」のみでなく、指などの「人間の身体」、 「物質」も含めてください。

・被害者への侵入先は、膣だけでなく、肛門・口腔も含めてください。  

 

2. 地位・関係性を利用した性的行為に関する規定の創設

(諮問 第 3 監護者であることによる影響力を利用したわいせつな行為又は性交等に関わる罪の 新設)

【要望】

・被害者と加害者が顔見知りである場合、明確な「支配―被支配関係」がなくとも、加害者と被害 者には力関係があります。一定の関係性がある中での性的行為については、暴行・脅迫要件を撤廃 し、指導的立場・保護責任者等、地位・関係性を利用した性的行為に関する規定を創設してくださ い。

・近親姦は、「親密圏」の中で起こる性犯罪です。支配―被支配関係にある他者とは異なる関係性を 有しています。内縁の夫や、母親の交際相手で同居していない者からの虐待も、現実には多く起こ っているので、同居の婚姻関係にある夫婦に限定しないことを望みます。扶養関係者、親族、母親 の交際相手を含む性犯罪は、「地位関係性」と別に、「近親姦罪」として新たな規定を創設してくだ さい。  

 

 

【意見】

 ・性暴力は「性的欲求を満たす暴力」と考えられています。しかし本来は、 『「攻撃」 「支配」「優越」 「男性性の誇示」「接触」「依存」などの様々な欲求を、性という手段・行動を通じて自己中心的に充 足させるために被害者をモノとして扱う暴力』です5)。 ・対等性が確保されない地位・関係性においては、被害者が加害者に対して、性交に不同意であるこ とを、意思表示できない状況に置かれます。「監督」「指導」「教育」等という名目で、性犯罪が正当 化されます。

・ 職場の雇用関係、学校の教師・コーチなどの指導的立場にあるもの、児童養護施設、障害者施設 (知的、精神、身体)、高齢者施設などの生活の世話をする立場にあるものを含めてください。 ・特に児童が被害者である場合、親密な関係を経て、「性的干渉」「性的搾取」が起こります。

 

第3. 性犯罪を非親告罪とすることについて (諮問 第 4 強姦の罪等の非親告罪化)

【要望】 ・親告罪であることは、「(検察という)国家権力を動かすこと」を本人に委ねることであり、個人 に対し多大な負担をもたらします。性犯罪について、本人の告訴手続きを不要とし、非親告罪化し てください。

 

【意見】

① 非親告罪化は国際基準

・国連からも、性犯罪の非親告罪化を求める勧告が、出されています6)。国連女性差別撤廃員会は 2009 年に刑法において、性暴力犯罪は被害者が告訴した場合に限り起訴され、依然としてモラルに 対する罪とみなされていることを懸念すると述べています。

 

② 親告罪であることが子どもの性暴力にもたらす影響

・特に被害者が年少である場合、自分だけで裁判を起こすことは困難です。しかし、加害者が子ども の親である場合、もう一方の親が、婚姻関係にある加害者を告訴することへの抵抗は、少なくあり ません。

・平成 25 年に警察に届け出のあった強姦被害の内、小学生以下は 47 人、中学生から 19 歳以下は 510 人、あわせて 557 人です7)。一方で、同年児童相談所が対応した性的虐待件数は、1,582 件です8)。 警察に届け出のある性犯罪件数と、実際起こっている性暴力の件数には、大きな開きがあります。 また内閣府の平成 26 年の調査では、女性の 6.5%に「異性から無理やりに性交された経験」があり、 そのうち小学生以下の被害が 11.1%に及びます9)。

 

③ 加害の責任

・親告罪によって被害者が訴えず、加害者が野放しになることで、地域社会の安定性が揺らぎます。 さらなる被害者を生み出すこと、1 人が繰り返し被害に遭うことにより、被害者の周囲の人々、地域 も傷つきますし、加害者も自分の加害に対し、責任を取ることができません。  

 

第 4. 集団強姦罪について (諮問 第 5 集団強姦等の罪及び同罪に関わる強姦等致死傷の罪《刑法百七十八条の二、および 百八十一条第三項の廃止》)

【要望】

・加害者が複数であることは更なる打撃を与えます。集団強姦罪としての規定も残しておいてくだ さい。  

 

【意見】 ・集団強姦は大きな事件です。被害者への影響もはかり知れません。集団強姦罪が存在することで 「集団による強姦はとりわけ許されない」という姿勢を示す効果があります。 以 上

 

         

引用文献 1) 9)内閣府男女共同参画局:男女間における暴力に関する調査(平成 26 年度調査) http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h26danjokan-8.pdf 2) 文部科学省:年齢と体力、運動能力、 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/11/08100803/008/001.htm 3) 宮地尚子「トラウマ」岩波書店,2013 年,p.132 4) 宮地尚子「トラウマ」岩波書店,2013 年,p.131 5) 藤岡淳子「性暴力の理解と治療教育」誠信書房,p.15 6) 国連 女性差別撤廃員会最終見解:2009 年 8 月 7 日 http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/html/shisaku/ss_shiryo_2.html 7) 『平成 25 年の犯罪情勢』p.90「就学別の犯罪被害件数」 https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h25hanzaizyousei.pdf 8) 『平成 25 年度 福祉行政報告例 児童福祉 年度次 2013 年度』 「22 児童相談所における児童虐待相談の対応件数,被虐待者の年齢×相談種別別」 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001128544 10)アディクションと家族,家族機能研究所,第 29 巻 1 号,「児童期に極めて深刻な近親姦虐待を 受けた成人女性に見られる精神障害―解離性同一障害の発生頻度への注目と彼らへの治療方針につ いての検討」斎藤学 

 

 

 

以下は、諮問内容には上がっていないことですが私たちは、これらが非常に重要であると考え ています。私たちの意見は下記のとおりです。  

 

1. 配偶者間における強姦罪の成立について

【要望】 日本では、配偶者は「常に相手の性的欲求に応じなければならない」とされ、「趣味」「嗜好」とい う名の性暴力にも耐えることが求められています。しかし、同意のない性の強要は強姦です。配偶 者間でも強姦罪が成り立つことを明記してください。  

 

【意見】

・日本国憲法では、両性の平等が認められています。それは配偶者間においても、保障されるべき権 利です。

・性犯罪の加害者と被害者の関係に、配偶者、ならびに配偶者と同様の関係にある者の二者を含む ことを、明記してください。   

 

2. 性犯罪に関する公訴時効の撤廃又は停止について

【要望】

・性犯罪は、支配関係に基づき、性的に侵襲される被害です。支配関係から抜け出し、裁判に耐え る力を身に付けるまでには、時間がかかります。年齢を問わず、性犯罪の公訴時効を撤廃してくだ さい。

・特に被害者が年少である場合、性犯罪被害を「被害」として認識できないことがあります。また、 年少であるほど、性暴力によって解離や DID(解離性人格障害)を起こしやすく 10)、その後の人生 に多大なる影響を及ぼします。しかし年少者が自分の力だけで裁判を起こすことは、困難です。少 なくとも被害者が年少である場合、被害を認識できるまで、時効の進行を停止してくださることを 求めます。  

 

【意見】

① 事件から時間が経った裁判における立証

・証拠保存体制を確立しておけば、事件から時間が経っても、裁判で犯罪を立証する証拠となりえ ます。

・司法面接等、事件発生時の本人の証言を適切に保管しておけば、事件から時間が経っても、裁判で 犯罪を立証する証拠となりえます。

 

② 証拠保存体制の確立

・日本の病院には、性暴力の証拠を採取するためのレイプキットが、準備されていません。証拠保存 体制を確立すれば、暴行脅迫や同意の有無を争う必要がなくなる事件もあります。産婦人科を有す る一定規模以上の病院は、レイプキットを常備し、警察と連携した証拠保存体制を確立してくださ い。 

 

1回目要望書は11/2法制審議会開催後に配布されました。

 

 

更に論点を追加し、11/24には第2回目の要望書を福島みずほ議員の秘書の池田幸代さんが法務省に同行してくださり、法務省刑事局局付の職員岡田志乃布さんに、山口厚部会長宛の要望書を手渡しました。

 

 

 

以下、第2回目報告書全文です。

 

法制審議会

刑事法(性犯罪関係)部会長 

山口 厚様

 

 

性暴力と刑法を考える当事者の会

                                                                                 代表 山本潤

 

 

性暴力被害者の声を反映した刑法強姦罪の見直しを求める要望書(2)

「私たちの声を聴いてください

 

「性暴力と刑法を考える当事者の会」は、性暴力被害者、ならびに性暴力被害を自分の事として考えるメンバーにより、性暴力被害の実態と被害者の思いを伝えるために立ち上げた会です。

 20141029日に要望書を提出しましたが、新たに検討した要望・意見を提出いたします。

 ご検討・ご配慮頂けますようよろしくお願いいたします。

 

 

以下のものは、新たな意見です。

 

1.強姦罪の用語の変更について

【要望】

強姦という言葉は不適切と考えます。性的少数者、女性、男性は平等の権利を有するのですから「暴行罪」として構成し、強姦は「性的侵襲罪」という言葉に変更することを要望します。

 

 

2.強姦罪の構成要件について

1)性犯罪の法定刑について

【要望】

法定刑は懲役5年以上を要望します。ただし、減軽されて執行猶予が付くことがないようにしてください。また、効果的な更生プログラムを実施してください。

 

【意見】

1. 性犯罪は、人の尊厳に関わる望まない性行為を強制されることです。その重さを、法定刑をもって評価することが必要だと思います。法定刑の引き上げは、性の人権重視を社会に示すことでもあります。現行法で性犯罪として定められているのは「強姦」ならびに「強制わいせつ」ですが、「性的暴行」「性的接触」「性的侵襲」「性的搾取」等、侵入度合いにより段階を分け、法定刑を加重していく必要があると考えます。

. ある性暴力被害者は、「加害者は、決められた刑期を終えれば刑務所から出られる。でも、被害者は終身刑を与えられる」1)と述べています。加害者が刑務所で適切な更生プログラムを受け、被害の重さを認識してもらうことを望みます。受刑者の更生プログラム受講と出所後のサポート(保護観察、当事者グループ等)を必須にすることで、「性犯罪をしない社会」「性加害行動から回復できる社会」「社会再参加ができる社会」を実現してくださることを望みます。

 

 

2)被害者の対象年齢の引き上げについて

【要望】

1.未成年者保護の観点から、被害者の対象年齢を16歳未満に引き上げてください。児童福祉法、青少年保護育成条例などによってではなく刑法によって罰せられることを強く要望します。

2.未成年者への「性暴力」「性的搾取」「性的干渉」を防止できるよう、発達段階に応じた被害者・加害者の年齢層ごとの性犯罪の類型を設け、年齢差ルールを設定するなど新たな規定の創設を要望します。

 

【意見】

1.性暴力は、加害者が「支配欲」等の欲求に基づき、被害者をモノとして扱う行為であり、そこに同意などの被害者の意思は存在しません。特に被害者が子どもの場合、人間として成長発達していくことを阻害されます。児童として保護される年齢の者に対する性的侵害、性的搾取を犯罪と定めてください。

. カナダでは成人との性的活動に限定すれば16未満を同意年齢と定めています。また、被害者・加害者の年齢差、被害者に対して信用的・権威関係的・依存的・または搾取的な関係を築いているかによって性犯罪の類型を規定しています。日本でもこのような年齢差・関係を考慮した規定を創設する必要があると考えます。

. 性犯罪は「性的自由」「性的自己決定権」の侵害として位置付けられているため、「性同意」(性交に同意する自由)という概念が用いられています。しかし、社会が個人に対して、性、妊娠、出産、育児、人工妊娠中絶、性感染症、その後の治療等の結果に対する責任を求めるのは、義務教育を終えた者であると考えます。

4.未成年者にもプライバシー権があります。対等で同意があり強制のない性行為を規制することがないよう配慮してください。

 

 

3)強姦罪の主体等の拡大について

【要望】

性的少数者、女性、男性は平等の権利を有するのですから「主体等をすべての性に拡大し、「性別にかかわらず」と明記されることを要望します。

 

【意見】

1、被害者について

・被害者が男性、男児である場合、「挿入させられる被害」があります。身体的境界線を破って、自分の性器が膣、肛門、口腔に覆われる行為は「強姦(性的侵襲)被害」と捉える必要があります。

・肛門レイプ、口腔レイプの場合、現行法では「強姦(性的侵襲)」は適用されません。その分法定刑が軽くなっています。

・現行法の定義では、LGBT等の性的少数者が排除されています。性に関わらず、身体に密着され侵襲される性行為を強要された時には、「強姦(性的侵襲)被害」と捉える必要があります。

 

2、加害者について

性別にかかわらず「挿入させる加害」「挿入させられる加害」を、強姦(性的侵襲)加害として定義することが必要です。

 

 

4) 性交類似行為に関する構成要件の創設について

【要望】

 密着され侵襲される行為を、強姦(性的侵襲)として定義することを要望します。

 

【意見】

1.性暴力被害の場合、加害者との距離が非常に近く(というより密着されたという意味では、距離がゼロかマイナスになります)、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などすべての身体的感覚が侵襲された状態が長く続きます2)PTSDの発症率は、自然災害を受けた人の場合、5%くらいですが、レイプの場合女性で46%、男性で65%ととても高く3)なります。

2.被害者への侵入先は、膣だけでなく、肛門・口腔も含めてください。

3.性交類似行為の範囲として、加害者による肛門・口腔・膣への挿入物は「陰茎」のみでなく、指などの「人間の身体」、「物質」も含めてください。

 

 

. 性犯罪を非親告罪とすることについて

【要望】

性犯罪について、本人の告訴手続きを不要とし、非親告罪化してください。併せて、被害者の意向が無視されないよう、「必ず被害者の意見を聞くこと」という規定を刑事訴訟法に含めることを要望します。

 

【意見】

1.     親告罪であることは、「(検察という)国家権力を動かすこと」を本人に委ねることであり、個人に対し多大な負担をもたらします。

2.     非親告罪化は国際基準

国連からも、性犯罪の非親告罪化を求める勧告が、出されています4)。国連女性差別撤廃員会は2009年に刑法において、性暴力犯罪は被害者が告訴した場合に限り起訴され、依然としてモラルに対する罪とみなされていることを懸念すると述べています。

3.     親告罪であることが子どもの性暴力にもたらす影響

・特に被害者が年少である場合、自分だけで裁判を起こすことは困難です。しかし、加害者が子どもの親である場合、もう一方の親が、婚姻関係にある加害者を告訴することへの抵抗は、少なくありません。

・平成25年に警察に届け出のあった強姦被害の内、小学生以下は47人、中学生から19歳以下は510人、あわせて557人です5)一方で、同年児童相談所が対応した性的虐待件数は、1,582です6)。警察に届け出のある性犯罪件数と、実際起こっている性暴力の件数には、大きな開きがあります。また内閣府の平成26年の調査では、女性の6.5%に「異性から無理やりに性交された経験」があり、そのうち小学生以下の被害が1.1%に及びます7)

4.     加害の責任

・親告罪によって被害者が訴えず、加害者が野放しになることで、地域社会の安定性が揺らぎます。さらなる被害者を生み出すこと、1人が繰り返し被害に遭うことにより、被害者の周囲の人々、地域も傷つきますし、加害者も自分の加害に対し、責任を取ることができません。

 

 

4. 地位・関係性を利用した性的行為に関する規定の創設について

【要望】

1、扶養関係者、きょうだい、親族、母親の交際相手を含む「親密圏」の中でおこる性暴力について、近親者による性的侵襲罪の創設を要望します。

2、一定の関係性がある中での性的行為については、暴行・脅迫要件を撤廃し、指導的立場・保護責任者等、地位・関係性を利用した対等でない関係の性的行為に関する規定を創設してください

 

【意見】 

.近親姦は、「親密圏」の中で起こる性犯罪です。支配―被支配関係にある他者とは異なる関係性を有しています。内縁の夫や、母親の交際相手で同居していない者からの虐待も、現実には多く起こっており、同居の婚姻関係にある夫婦や監護者に限定しないことを望みます。「地位関係性」と別に、「近親姦罪」として新たな規定を創設してください。

2.地位―関係性について

・被害者と加害者が顔見知りである場合、明確な「支配―被支配関係」がなくとも、加害者と被害者には力関係があります

性暴力は「性的欲求を満たす暴力」と考えられています。しかし本来は、『「攻撃」「支配」「優越」「男性性の誇示」「接触」「依存」などの様々な欲求を、性という手段・行動を通じて自己中心的に充足させるために被害者をモノとして扱う暴力』です8)。対等性が確保されない地位・関係性においては、被害者が加害者に対して、性交に不同意であることを、意思表示できない状況に置かれます。「監督」「指導」「教育」等という名目で、性犯罪が正当化されます。

職場の雇用関係、学校の教師・コーチなどの指導的立場にあるもの、児童養護施設、障害者施設(知的、精神、身体)、高齢者施設などの生活の世話をする立場にあるものを含めてください。

・特に児童が被害者である場合、親密な関係を経て、「性的干渉」「性的搾取」が起こります。

 

 

. 集団強姦罪について

【要望】

集団強姦罪の処罰規定を残し、集団による性的侵襲罪として懲役六年以上の法定刑を要望します。

【意見】

・集団強姦は大きな事件です。加害者が複数であることは更なる打撃を与え被害者への影響もはかり知れません。集団強姦罪が存在することで「集団による強姦はとりわけ許されない」という姿勢を示す効果があります。

 

 

以下の意見は前回と同じですが改めて強く要望いたします。

 

1.強姦罪の構成要件について

強姦罪等における暴行脅迫要件の緩和

【要望】

フリーズ(凍り付き)反応という身体反応や、関係性による抵抗の困難さを考慮し、暴行脅迫要件を撤廃もしくは緩和してください。

「暴行脅迫」要件を撤廃できない場合、「暴行脅迫」だけでなく、「偽計」「不意打ち」「威力」「策略」「解離・麻痺」「薬物利用」「知的障害」「精神障害」「筋力差」等の要件を追加してください。

裁判において、「被害者の同意」を立証するための「証拠」として、犯罪成立要件と関係のない、被害者の私生活や性的経験を持ち出してくることは、少なくありません。こうした論証を禁止し、プライバシーを守る規定を創設してください。

司法関係者へ性暴力被害の実態および被害者のリアリティが理解できる研修を行い、被害者が司法手続きの中で二次被害を受けないようにしてください。

 

【意見】

  身体反応による抵抗の困難さ

・現行法で求められる、暴行脅迫要件は、性暴力被害者の現状とかけ離れています。

・被害者は、被害にあうことは全く予測していません。人間は、突然襲われた時、状況によっては「おい」という声掛けだけでも、身も心も凍りついて動けない状態になることは、精神心理学の研究でも、明らかにされています。

・不意打ちをつかれ、襲われた時に、まず何が起こったのかが、理解できません。その後、圧倒的な恐怖にさらされ、フリーズ反応に陥り、肉体的、精神的な衝撃が、心的外傷(トラウマ)となる人も、少なくありません。被害者に「解離」「鈍麻・麻痺」が起これば、加害者は、暴行脅迫を用いなくても、性行為を達成できます。

・生命を守るために、抵抗できない状況があることを理解してくださることを望みます。

  関係性による抵抗の困難さ

・また被害者が、加害者に「抵抗できない関係」にあれば、加害者は、暴行脅迫を用いなくても、性行為を達成できます。

・内閣府が平成26年に行った「男女間における暴力に関する調査」9)では、性暴力の66.3%が、顔見知りからの犯行であることが、報告されています。加害者は、被害者の信頼や人間関係を利用して犯行に及びます。ナイフで脅かしたり、殴る・蹴るなどの暴行を用いなくても、性暴力を達成できるのです。

・加害者が男性で、被害者が女性の場合、男性と女性では筋力の差が大きく、身体的な力が対等ではありません10)。また憲法上は男女平等ですが、「女性は男性に従う」等の男尊女卑の風潮は、少なからず残っています。女性の管理職や政治家の割合は、世界と比較して非常に少ない現状にあります。こうした身体的・精神的・社会的な力の不均衡が、性暴力の達成に大きく関与していることを考慮してください。

  不同意という概念を取り入れること

・「不同意」という概念を取り入れ、同意に基づかない性交を処罰の対象としてください。

  被害者のプライバシー保護を求めます

・現行法では、暴行脅迫要件があるがゆえに、裁判では、被害者の「同意の有無」が問われます。被害者は本来、「証人」としての参加であるにもかかわらず、「同意がなかったこと」を立証する必要があります。

・しかし加害者にとっては、被害者の意思・不同意を無視、あるいは抑圧して、性的侵襲を加えることが、自分の力や優越性を感じる上で重要であり、被害者の同意を得ようとは考えていません。

・被害者が「同意したかどうか」「抵抗したかどうか」によって、犯罪があったかどうかを判断するのではなく、加害者が何をしたか、加害者の行為に着目して、事実認定を行ってください。

  司法関係者への教育

・性暴力被害者が抵抗できない状況に置かれながら、裁判で暴行脅迫や同意の有無を争う必要があることについて、被害者が二次被害を受けることのないよう司法関係者への教育を徹底してください。

以 上

 

 

  

引用文献 

1)弁護士ドットコムニュース

https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/n_2305/

2)宮地尚子「トラウマ」岩波書店,2013,.132

3)宮地尚子「トラウマ」岩波書店,2013,.132

4)国連 女性差別撤廃員会最終見解:200987

http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/html/shisaku/ss_shiryo_2.html

5)『平成25年の犯罪情勢』p.90「就学別の犯罪被害件数」

https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h25hanzaizyousei.pdf

6)『平成25年度 福祉行政報告例 児童福祉 年度次 2013年度』

22 児童相談所における児童虐待相談の対応件数,被虐待者の年齢×相談種別別」

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001128544

7)9)内閣府男女共同参画局:男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)

http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h26danjokan-8.pdf

8)藤岡淳子「性暴力の理解と治療教育」誠信書房,.15

10)文部科学省:年齢と体力、運動能力、

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/11/08100803/008/001.htm

 

 

 

2回要望書も、11/27の法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会会議の際に配布されました。